ジェット気流と風船爆弾

地球温暖化の影響もあり、北半球を流れる偏西風の蛇行によって、世界各地で異常気象が起こっていると聞く。今年の日本の梅雨は集中豪雨もあって、アメダスの降水量記録を更新した地点も多いようだが、こちらアメリカでは、記録的な猛暑となっていた。もっとも当地コロラドは、湿度が非常に低いので、日本の夏ほどの不快さは無いのが通例であるが、流石に体温よりはるかに高い外気温になってくると話は別で、少々夏バテしてしまったのである。

偏西風といえば、毎度のことながら、日本帰国便で北太平洋上を飛行中に最も意識させられる。いわゆるジェット気流の強弱により、大陸間を長時間かけて結ぶ飛行機は大きな影響を受けるからだ。予報より強烈な向かい風は、日本の到着時刻の遅れを意味し、空港から遠く離れた地に実家がある自分には、鉄道ダイヤの面などが心配だ。

逆に、日本からアメリカへ渡航する時は、その恩恵を充分に得られるはずだ。しかし2006年現在でも、日本からデンバーへの直行便は無い。必ずアメリカ国内で乗り換えることとなっているので、あまりそのメリットを感じないことの方が多かったのではあるが、5年前に発生した例の事件以降は、入国審査の手続きに少々時間がかかるようになっているので、そんなことも無いのかもしれない。

そんなジェット気流であるが、利用するのは航空機だけではない。半世紀以上昔には、その太平洋横断コースを、夥しい数の「風船爆弾」が、北米大陸に向け飛行したことがあった。ジェット気流が対流圏の上面に在る関係で、昼夜で上下に高度変化するジェット気流帯のまっただ中を、搭載された砂バラストで自動的に高度調整しながら、"静かに静かに"しかし高速で飛行したのだ。もちろん風任せの旅であるから、風船の到達率は低い。運良く生き延びてアメリカ本土に到達した風船といえども、運悪く昼間に到達した風船は、待ち構えた迎撃戦闘機が丹念に一つ一つ撃ち落していたと聞く。幸運にも闇夜に乗じて侵入した風船は、時限装置で自爆することで自由落下の爆弾と化し、ロッキー山脈山中などでミステリアスな山火事を頻繁に引き起こした。当時、その攻撃に関して巧妙に報道管制をしていた米国では、一般市民にはソレが何であるかも分らず、知らずに不発弾に近づき、米国48州の本土内で(オレゴン州)唯一の戦死傷者を出している。

ジェフコで飛行する我々の訓練空域の北端、ロッキー山脈東斜面のフォートコリンズ市郊外にも、その風船爆弾の一つが到達していた。その取材が載った地方新聞の記事を切り抜いて、暫く保存していたのだが、4~5年前に何かのきっかけで、作家の佐々木譲氏に進呈したことを思い出した。勿論、それをネタに彼に何か書いていただけるかも…という下心からだった訳だが、風船の旅と同様に未だ静かに飛行中なのかもしれない。

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